粉薬と錠剤。
- 伊吹 一
- 2022年4月1日
- 読了時間: 2分
なんでもない話をします。
ケチって花粉症の薬を買ってなかったのですが、安物の点鼻薬と目薬じゃもう、限界が来てしまったので、ドラッグストアに行って、一番安いタイプの一日二回飲んでしかも眠気がくるやつを買いました(安いので、仕方ない)。
飲んでみるとびっくりするくらい症状が軽くなって。薬ってホント凄いなと思う今日このごろなのですが、一番話したかったことは、この薬が「錠剤」であるということです。
小さい頃を振り返ると、数ページ目に来るのが粉薬の恐怖です。一ページ目とは言わないけど、本当に数ページ目には来るくらい粉薬は大嫌いで、喉の奥に入れる飲み方も、ゼリーを使う飲み方も、溶かして飲む飲み方も全部試したけど、本当にうぇっ! って毎回なってしまって、人生の困難そのものでした。
でも、いつくらいになるんだろう。多分、小学校高学年とか、それくらいの頃だと思うんですけど、ふと、お医者さんが、「錠剤にしましょうか?」と聞いてくれました(正確には親に言ったのかもしれないけど)。
それを聞いた僕は、「本当にお願いします」と、懇願しました。
「錠剤は飲むのが難しいけど大丈夫かな?」なんて言ってるお医者さんの言葉なんかなんの気にもなりませんでした。あの粉薬……変な味がして、パサパサして、水と馴染むと途端になんっともいえないましゃましゃした感じになって舌にまとわりつくあの忌々しき粉薬……それと比べれば、カチンコチンになってる小さい塊を飲むくらい、なんてことなかったです。
実際、その日を境に僕が薬で嗚咽することは一切なくなりました。錠剤はびっくりするくらい飲みやすくて、何の味もしなくて、水とちょっと混ざったからってましゃましゃになりません(そういえば、ましゃって福山雅治さんのあだ名でしたっけ)。本当にそれは僕にとって幸福で、人生の大きすぎる困難が一つ鮮やかに消えた瞬間でした。
こんな分かりやすいことは早々ないけれど、でも生きてればそういうことってあるのかもなって思います。今はしんどくて、もう耐えられないくらい嫌になる事でも、時が過ぎれば思ってもみない解決が外側からやってきて、その時の辛さは全部消えてしまう……。
そんなにあることではないけれど、でも未来に対して、そういう漠然とした解決を期待するって案外大事な気がしています。生きてればいいこともあるさ、ってことなのかもしれません。
花粉はしんどいけど、やっぱり春はいいです。好きです。
以上、なんでもない話でした。
追伸
当初タイトルは、「粉薬から錠剤へ。人生捨てたもんじゃないね、おっかさん。」でした。やめときました。
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